強訳 -強引な翻訳-

英字新聞の見出しを一つ翻訳する日記

11月18日

圧倒的。その言葉はカレーの香りのためにある言葉だ。
実体なんてないのに力強い。香りなんて見えないのに本当に黄色い煙みたいなものがふわふわ漂ってそうだ。今日もどこか見えないところからの、不意の香りに圧倒された。
だから今夜はカレーにする。幸い野菜類は家にある。ないのはお肉だけだが豚肉がタイミングよく安くなっていたのでそれを買った。
すぐに帰ってカレーを作りたかったけど、あ、と思い出し本屋に寄った。

先週、本屋に寄ったらいつも見る本棚がぽっかり空いていて、その棚は以前から買おうか迷っていた本が置いてあった棚だった。
慌てて周辺を探してみたけどその本はなかった。
実はタイトルは覚えておらず聞いたら思い出すと思うのだけど、言えといわれてもわからない。
聞いたことのない外国人作家で出版社もよくわからない会社だった。
あきらめようかと思ったけど棚に隙間があるということは、今どけたばかりではないのかと考えて、思い切って店員さんに尋ねてみた。
「タイトルとか出版社とかわかりますか?」と聞かれたけどわからないと答え、何か覚えていることとして、マレーシアとかシンガポールとかそのあたりの作家だったような気がする、内容は短編集でそのうちの一つが男の人の目線で広場にいるおばあさんについての話だったような、と伝えると「今日はあいにく外国文学の担当の者が休みなのですが、また調べておきます」と言われた。
それが先週のことだった。

だから今日結果を聞くために本屋に寄ったのだ。

先週の店員さんはどうやらいないらしく、適当な店員さんに説明をして尋ねた。
「今日は外国文学の担当が休みをいただいておりまして」と期待外れの返事が返ってきた。連絡は伝わっていないのかもしれない。「よろしければ連絡先を教えていただければまたこちらから連絡させていただきますが」と言われたが、今回は断って帰ろうとした。
すると横にいたスーツの店員さんが「すみません、どうやらこちらの手違いですかね」と入ってきた。「もしよろしければもう一度覚えておられる範囲で手掛かりを教えていただけますか?」と提案されたので、伝えることにした。そしてそれをヒントにパソコンで調べてくれた。
ありそうですか、とちらっと見ると本の管理データで調べてくれているのかと思ったらアマゾンで(マレーシア、おばあさん、公園)とかでキーワードを検索してくれていた。「ちょっとわからないですね・・・」となかなか見つからなかったので、こちらから色々な単語を伝えて、二人であれやこれやと探していると、あ、これっぽいです、と画面に映った一冊の本を指さした。
ソラでは思い出せなかったが、画像で見るとそれっぽく感じた。
その本を在庫検索してもらうと「在庫ありになってますね・・・」と言って本棚へ探しにいってくれた。
しかし二人で探しても本は見つからず、「裏見てきます」と倉庫を探してくれたが、結局倉庫にもなかった。
「管理できてなくてすみません、注文していただいてもいいんですが入荷後にキャンセルはできないので、確実にこれだと言い切れないとむずかしいですよね」と言われ、こちらもお手数をお掛けしました、また覗きに来ます、ありがとう、とお礼を言って店を後にした。

帰り道カラーリボンを配っていたりユニセフのチラシを配っていたり、通りがとても賑やかだった。
海外での医療活動の寄付を募っていた人が「おねがいしまーす」と来たので豚肉を買った時にポケットに入れたおつりを握りしめた。
215円だった。一瞬どれを渡すか考えたけどまぁいいやと思い全部差し出した。
すると「500円からでお願いしているんです」と言われ、そうなんですね、すみませんと言って帰った。

The New York Times
Police expected the Halloween crowd. Why couldn't they stop the disaster?
(警察はハロウィンの人だかりを予想していた。なのになぜ災いを防げなかった?)

こうしてまたひとつ自分の力のなさを思い知るのだ。