強訳 -強引な翻訳-

英字新聞の見出しを一つ翻訳する日記

12月1日

冬もうまく帳尻を合わせてきたものだ。
先日まで20℃近くあり、このままずっと冬は来ないものかと思っていた。
それが12月に入った途端にこれだ。
吹く風もいきなり冷たくなっている。
風が中に入ってこないようにジャケットを上まで留め、背中を丸めてトボトボ歩いた。
歩いている前を横切ってトラックが道路に出ようとしていた。
ふと見るとアパートが解体されていた。
あ、このアパートはたしか。
たしか、以前にも何度もここを通った時に見ていたアパートだ。
ここを通ると決まってこのアパートの一室からテレビの大きな音が漏れ聞こえてきていた。
それはとても大きな音だった。
なぜそんなに音が漏れているかというと、窓が開け放たれていたからだ。
窓だけでなくカーテンも開かれていて、いつも中が丸見えだった。
その部屋に住んでいたのは60前くらいのおじさんだった。
おじさんはテレビを大迫力で楽しんでいた。
窓の外には仕事で使うのだろうか、いつも小さなハンカチくらいの布切れが何十枚も大量に干してあった。
自分の部屋だけでは場所が足りなくて隣の方まで並べてあった。
一度夏の終わりぐらいの頃に通りがかった時は、おじさんは外にパンツ一丁の姿で出ていて、その恰好のまま駐車場の車を触っていた。
車はピカピカに磨かれていてなかなかイカしていた。
おじさんのお腹はポッコリ出ていたけど、おかげで貫禄も出ていてそれがまた車とよく似合っていたのだ。
そういえばあの頃から周りの部屋はシャッターが閉じられていてほとんど空き部屋のようだった。
唯一おじさんの隣の隣の部屋だけたまに灯りが点いていたのを見たことがあったが、その後その部屋のエアコンの室外機が外されていて、あれ?居なくなったのかなと思ったことがあった。
今思えばもうその頃から取り壊しが決まっていてみんな徐々に引っ越していったのだろう。
おじさんはこのアパートの最後の住人としてここに住んでいたのか。

The japan times
Japan starts power-saving period amid fear of supply crunch
(電力供給不足の恐れがある中、日本で節電期間が始まった)

今頃おじさんはどこで暮らしているのだろう。
新しい場所でも気兼ねなくパンツ一丁でウロウロできていたらいいけど。
今日は寒いからちゃんと窓は閉めているだろうか。