強訳 -強引な翻訳-

英字新聞の見出しを一つ翻訳する日記

1月13日

The melody melted into the still air of the early morning

パッと目が覚めると、周りはまだ真っ暗でシンとしていて、外を走る車の音もしなかった。

夢を見ていた覚えはなかったのだが、なぜか頭にメロディーが朧げに残っていた。
それを盲の人が点字を辿るように、ゆっくりと鼻歌でメロディーを辿ってみた。

”フフンーフーフー フフンーフーフー フフーフフーフー
フフンーフーフー フフンーフーフー フフーフフーフー”

どこかで聴いたことある気がする。
そう思って何回も頭にあるうちに口ずさんでみたが、わかったのはこの部分だけだった。なんていう曲かなぁ、と思いながら何度も繰り返したが、何の曲かは全然わからない。少し懐かしいような雰囲気のあるメロディーなのだが、それが実際懐かしい歌なのか、それともメロディー自体が懐かしく感じさせるのかはわからない。邦楽か洋楽かもピンとこなかった。
あぁ、このまま寝てしまえば、起きたころにはすっかりこのメロディーを忘れているだろう。メロディーが浮かんだこと自体も忘れてしまっていたらいいけど、メロディーだけ忘れてたらさらに事態は悪化する。
どうしようか。音楽家ならなにか楽譜なりに残せたのだが。

そういえばインターネットの検索を使えば鼻歌で曲名がわかるというのを聞いたことがあった。それで調べたらすぐに片が付くのではないだろうか。
だからここでさっと調べれば終わりそうなのだが、スマートフォンを持っていないのでPCを使うしかなくて、でも布団から起き上がるのはとても面倒だった。
もうずいぶん前から裸で寝るのが常になってしまっていて、起き上がると寒いのだ。しかし、このまま何度も鼻歌を歌ったところで曲名は思い出せそうにもない。
これでは埒が明かないと思い意を決して起きた。
布団を出るとやっぱり寒い。
さっさと検索してしまおうとPCの電源ボタンを押した。立ち上がったPCの画面には現在時刻が4:17と示されている。
googleの検索画面にあるマイクのマークを押すとお話しくださいの文字が表示されたので、静かめの声でPCに向かって鼻歌を歌った。

”フフンーフーフー フフンーフーフー フフーフフーフー
フフンーフーフー フフンーフーフー フフーフフーフー”

鼻歌を歌っている間、画面上の赤いマイクマークがリズムに乗る陽気な太陽のように鼻歌に合わせて何かを発していた。
歌い終えてしばらく待つと画面上には聞き取れませんでしたの文字が表示された。
もう一度今度は少し大きめの声で試してみると、また聞き取れませんでしたと出てきた。何度も繰り返し、繰り返すたびに鼻歌は大きくなっていった。
しかしいくらやっても結果は同じだった。

Washington Post
Furor over documents creates unexpected political peril for Biden
(文章をめぐる騒動がバイデンにとって予期しない政治的危機になる)

マイク付きのワイヤレスのイヤホンを使ってやってみたが、それでも結果は同じ聞き取れませんでした。
声が小さいのか歌が下手なのか何が悪いのだろう。
ひょっとしてこの歌が存在していないのだろうか。
しかしその判別はできなかった。
寒いし全然うまくいかないので、諦めてPCの電源を切って寝ることにした。
画面が暗くなると、そこには情けない裸が映し出されていた。

くっ、こんなことならもっと体を鍛えておけばよかった。