強訳 -強引な翻訳-

英字新聞の見出しを一つ翻訳する日記

6月9日

金曜日の夕方の駅はとても混雑していた。

天気は結局荒れることなく今日は晴れとまでは言えないけれど雨の心配はいらなかった。
それでもどうやら湿度は高いみたいで少し蒸しっとして汗ばんでくる。
駅の前では共産党が街宣活動を行っていて一人の人がマイクを使ってなにやら訴えかけていて、周りで数人が紙を配っていた。
前を作業着の男性が歩いていたが胸に赤いポテトチップスを大事そうに抱えていて紙を受け取る様子はなかった。
彼は帰ったらそのポテトチップスでビールでも飲むのだろうか。
彼の代わりに共産党の紙を受け取ると、そこには子どもの医療費の無料化だとか保険証廃止をやめろ、とか書かれていた。
みんな各々が自分なりに世の中を良くしようとしているのだろう。

家への道中、彼のポテトチップスに感化されたのかポテトが無性に食べたくて仕方がなかった。
部屋につくとさっそくじゃがいもを洗ってパンパンパンと切り、小麦粉をまぶしてフライパンで簡単に揚げ焼きにした。
グラスに氷と炭酸水と最後の梅酒を注いだ。
ゴクリと飲むと梅特有の酸味と甘い香り、そして炭酸の刺激が三位一体となって汗を吹き飛ばしてくれた。
最後だと思うと余計においしく感じられる。
ポテトもやっぱりおいしい。
油を含んだ塩がまたお酒を煽る。
今頃彼もポテトチップスをパリパリ食べているのだろうな。

ポテトと梅酒ソーダで落ち着いたところで晩御飯の準備に取り掛かる。
しめじと油揚げの味噌汁と鰆の西京漬けだ。
一昨日仕込んだ鰆の西京漬けがいい頃合いになっているはずだ。
味噌汁を先にぱぱっと作り、次に鰆を焼く。

切り身を一つ取り出し、味噌を丁寧に剥がしてホイルを敷いたフライパンに置き弱火で焼いた。

The Wall Street Journal
Donald Trump indicted in classified documents case
ドナルド・トランプは機密文書の事件で起訴された

鰆の周りに水分が出て、それがジリジリと焼けていい香りがしてくる。
ただ魚の切り身を焼くだけでは出ない、醤油の強い香りでもない、味噌と魚の旨味の混ざったおいしい香りだ。
焼き上がった鰆をパスタボウルにいれて、さっそく食べた。

完璧だ。

ご飯にめちゃくちゃ合う。
もう一口鰆を食べる。
お味噌汁にもめちゃくちゃ合う。
味噌の旨味と塩味を鰆が余すことなく全部吸い取っていた。
鰆は憑依型の名俳優のようだ。
味噌の良さを完全に理解して、さらにそこに鰆自身の良さを控えめに乗せていた。

鰆とごはんをガツガツと食べた。
鰆の西京焼きはあっという間になくなり晩御飯を終えた。
本当においしかった。
しかもそれが明日の分もう一切れ残っている。
なんてことだ。
せっかくならポテトチップスの彼にもお裾分けしたいぐらいだった。

ただうちには鰆を盛り付けるための皿がなかった。