強訳 -強引な翻訳-

英字新聞の見出しを一つ翻訳する日記

8月19日

勘の悪い自分でもここまでくるとさすがにわかってきた。

どうせ今日も土曜日だから晴れるのだ。
だから思い切って山でも登ることにした。
前からちょくちょく山には登ったりしているのだが、登山というほど大それたものではなく近くの小さな山を登っていた。
1000mを超えるか超えないかくらいの山ばかりだ。
気が付くと今年は一度も山に登っていなかったので今日は思い切って比叡山に登ってみることにした。
何十年か前に一度だけバスで行ったことはあるけれど、登るのは初めてだった。

朝の涼しいうちに登ろうと早朝にもぞもぞと起きだして山に向かったのだが、道がよくわからずバイクでウロウロしているうちに結局8時を超えていた。
駐車場をなんとか見つけてバイクを止め、いざ山に向かい登山道の入り口まで来た時になにやら少し胸の苦しさを覚えた。
この前のヤツか。
登山道の入り口近くのトイレにあったベンチに腰を掛けて少し様子を見ることにした。
15分ほど息を整えていると何とかいけそうな感じがしたのでトイレを済ましボチボチと登ってみることにした。
ひょっとしたら体が本能的にしんどいことを嫌がってワザとやっているのかもしれないし。
しばらく登っていると、あぁやっぱり少し苦しいなぁと深呼吸をしながらダマしダマし登っていた。
途中にベンチがあったので鞄を降ろして休憩をしていると、徐々にだけれど回復していくのがなんとなくわかった。
しばらく長めに休んでいると、お、これはいけそうだという感じがして立ち上がり歩いてみると先ほどまでの苦しさがなくなっており楽に歩くことができるようになった。
それでもあまり無理をせずカメラを持ってきていたので何枚かカシャカシャ撮りながらのんびりと山を登った。
山はだいぶ涼しくそして最近聞いていなかったミンミンゼミまで鳴いていて気分良く登ることができた。

だいぶ登ってきたなぁと思っているとかすかに鐘の音が聞こえてきて、延暦寺に近づいていることが分かった。
山の中で聞く鐘の音はなかなか良いもので蝉の鳴き声と相まって風流に感じられた。
いいなぁと思いながら歩いていると鐘の音はいつまで経っても鳴りやまず、修行の一環なのか何回も何回も撞かれているようだった。

出発から2時間ほどで延暦寺に到着するとそこにはすでに参拝客の姿があった。
思い思いの建物を見学しているようで、その中に一際人が集まっているところがあり、それが大きな鐘だった。
そこはみんなが順番に並んで鐘を撞いていて、先ほど聞こえた鐘の音はこの音だったのだ。

延々と鳴るその音を聞きながら延暦寺を後にして比叡山の頂上へと向かった。

The Wall Street Journal
Rising yields fatten American's pocketbooks
金利の上昇がアメリカ人の懐を肥やす

延暦寺を出てさらに比叡山の頂上を目指すと途中にすでに登頂をして下山してくる人と何人かすれ違った。
すれ違うたびに、こんにちは、とお互いに挨拶を交わした。
その中には数人で降りてくる外国人もいて、ハローと言おうか一瞬迷ったが、こんにちはときっちりと日本語で挨拶をすると「コンニチハ」と日本語で返してくれた。

そろそろ頂上かというところにテレビ局の名が入っていた中継基地の建物があり写真を撮っていたら、先ほどすれ違った外国人の集団がまた引き返して登ってきていた。
彼らは軽装で足元もスニーカーだった。
延暦寺までバスかケーブルカーで来てそこから登ってきているのだろう。

比叡山の頂上はすぐにあり辿り着くと見晴らしのない窮屈な丘みたいになっていた。
そんな狭いところで先ほどの外国人たちと居合わせることになった。
彼らの表情は比叡山の頂上に少しがっかりしているのか、それとも達成感に溢れているのかはわからなかったけれど、それなりにお互いを称えあっているように見えた。
ここで思い出の写真でも撮りたいかもなと思ったけれど、写真を撮りましょうか?という英語がcanなのかmayなのかはたまたshallなのか全然わからなくて考えるのが面倒くさくなり結局、写真を撮りましょうか?とコテコテの日本語で声を掛けた。
すると「イイデスカ、オ願イシマス」と流暢な日本語が返ってきた。
差し出されたスマートフォンを受け取り構えると彼らは最高の笑顔で肩を組んでいた。
じゃあワンツースリーでいきます、と言って、ワン・ツー・スリーと自分の中にある精一杯の英語を使いパシャリと写真を撮った。
写真を撮ったスマートフォンの画面はとても綺麗で、おぉ自分のカメラよりもすごくいいな、と思ってしまった。
スマートフォンを返し画面を確認してもらうととても喜んで貰えて「オォ、イイ写真デス」と褒めてくれたのだけれど、写真が良かったのはほとんどがそのスマートフォンと彼らの笑顔の結果だった。
「アリガトウ」とお礼を言われ、その後比叡山で食事ができるところを訊かれたのだけれど、比叡山のことをほとんど知らないので麓にあるテレビで見たマニアにも有名だと言われているうどん屋を、食べたことはないんだけどね、と付け加えてすべて日本語で教えておいた。

彼らと別れ下山をした。
下まで降りてくると下界は日差しがとても強くて暑く感じられた。

帰りにバイクを走らせながらひょっとしたら最澄は暑がりだったんじゃないかと思った。