強訳 -強引な翻訳-

英字新聞の見出しを一つ翻訳する日記

6月14日

湿度が90%を超えていてなかなかの出汁トマト日和りになった。

冷蔵庫を開けると、真っ赤だったトマトは出汁を吸って濃いえんじ色になっていた。
こんな人間でもたまには事前の準備が功を奏することもあるもんだ。
そう思っていたら、冷蔵庫にあると思っていた大葉が切れていた。
いつも気にして常備しているわけではないけれど、一度束で買うと当たり前みたいな顔をしてずっと冷蔵庫に居座っていたものだから、いつでもあるものだと思っていた。
肝心な時に切らすとは、やっぱり相変わらず仕事のできない男だ。

どうしようか迷ったけど、出汁トマトに大葉は味の面でも見栄えの面でもとても重要な要素なので、やっぱり買いに行くしかなかった。

小走りで店に行くと二束100円と書かれた大葉が最後の一パック残っていた。
こんな自分でもまだ少しはツキが残されているようだ。
ついでに炭酸水も買っておこうと店を回っていると、ブロックベーコンが100gあたり100円で売られていた。
おぉ。
しかも大量に売られていた。
あまり人気がないのだろうか。
たしかに普通の豚肉のブロックよりも安くて訝しい代物ではある。
原材料の欄もパブロ・ピカソの本名みたいにやたらダラダラとたくさんの文字が書かれていた。
いろいろ細部が気にはなるがブロックベーコンで作るポテトサラダも捨てがたい。
まぁせっかく来て買うものもあまりないからと結局買うことにした。

店を出て帰路を急いでいると歩道の真ん中にクリアアサヒのロング缶が一本ぽつんと置いてあった。
思わず立ち止まった。
クリアアサヒはどちらかというと冷蔵庫や机の上で見ることの多いビールだったから
こういう場面で出くわすのは新鮮だった。
缶の蓋はまだ開いていなかった。
とうとう自分にもツキが回ってきたのか。
それもロング缶だ。
まじまじとクリアアサヒを見ていた。
後ろから来た人が自分の横をさっさと通り過ぎて行った。
こいつ落ちてるビールを拾おうとしてるんじゃないか、と思われたかもしれない。
たしかにどうしようか、ロング缶だからな。
クリアアサヒのロング缶をよく見てみると、クリアアサヒを中心として半径10㎝ほどアスファルトの色が変わっていて、どうやらロング缶の表面の結露した水滴が地面を濡らしているようだった。
ようするにまだここに置かれてしばらくしか経っていないようで、もしかしたら、おつまみでも取りに行っているだけなのかもしれないし、置き忘れていたとしても取りに来るかもしれない。
だから今日はそのままにしておくことにした。
第一、家にはちゃんと自分のお酒と出汁トマトがあるのだ。
なんとか邪念を振りほどいて帰った。


The Japan Times
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岸田は「様々の状況を考慮して」解散総選挙を考える


冷蔵庫から出汁トマトを一つ取り出し包丁で6等分に切り目を入れて器に盛り、細かく刻んだ大葉をトマトに乗せその上から出汁をたっぷりと掛けた。
赤色のトマトに大葉の緑がとても鮮やかで涼しげだ。
やっぱり買いに行って正解だった。
一切れトマトを口に含むととても冷えていて気持ちがいい。
鰹出汁と大葉のいい香りとトマトの酸味がとてもスッキリしている。
今日はウイスキーを割る炭酸水をレモン風味のものを使った。
これもとても爽やかな風味で湿度の高さを忘れさせてくれた。
出汁トマトとの相性も悪くなかった。

ふと、これならクリアアサヒともよく合うんだろうなと思った。